006:現役「すくすくスクール」の、江戸川区ママたちが驚いた!
「学童保育」の常識を覆す  脱現実! 東洋経済のすごい「記事」

オピニオン005

2013年11月、「東洋経済オンライン」に、下記の記事が掲載されました。
「つまらない」「入れない」の常識を覆す 脱常識!江戸川区のすごい「学童保育」

この記事を読み、子どもを「すくすくスクール(学童クラブ)」に預けて働く江戸川区の母親たちは、そこに書かれている内容に多くの疑問を抱きました。本当にすくすくスクールでこんなことがあるの? これは事実とは違うのでは? そんな声が相次いで寄せられました。

東洋経済オンライン 記事には、江戸川区長自らが登場され語っておられます。するとこれは、江戸川区の「公式見解」ということです。そして記事を読んだ多くの人は、これが江戸川区の「学童保育」だと思うでしょう。しかし、実際の利用者の声に耳を傾けると、様々な誤解や、事実と違う内容も交じっているようです。そしてそこには意図的にある方向へ誘導しようとする、何かの「力」が働いているようにも思えます。

今回は、記事に疑問を持った多くの母親達が集まって、様々な疑問や意見を出し合いました。集まったお母さんたちを、仮に「篠崎さん」「小岩さん」「瑞江さん」「葛西さん」としましょう(実際はもっと多くの人数からのお声がありましたが、集約させていただきました)。フルタイムの正社員、自営、派遣など働き方は様々ですが、全員がお仕事をされながら子育てをしている方々です。また、子どもを気軽に頼める祖父母などが近所にはいない点で、共通しています。

なお元の記事を全文引用することはできませんので、一部を引用しながらのご紹介となります。元記事もあわせてお読みください。

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■1 すくすくスクール=学童保育、ではないのに。 そう思わせるような、記事の見出しが躍る理由とは?

瑞江さん:まず驚くのが、記事の見出し。これ、すごいですよね。良くできています。『「つまらない」「入れない」の常識を覆す 脱常識! 江戸川区のすごい「学童保育」』。いやあ…確かに「すごい」。私、電車の中で、携帯でこれ読んでのけぞりました。

葛西さん:これオンラインの記事ですよね。見出しって、WEBの中で情報としていちばん出回るでしょう。東洋経済オンラインのトップページでも出ますけど、Twitterなんかで広めていますよね。だから記事を読まなくても、見出し見ただけでなんか、「江戸川区って学童保育が充実してるんだ〜」という印象を多くの人に抱かせる。このタイトルは、そういう「効果」を狙っていると思いますね。

瑞江さん:その意味では、「秀逸」な見出しですね(苦笑。

小岩さん:でも皆さん思われたでしょうけど、まず大前提として、「すくすくスクール」は「学童保育」ではありません…よね?

全員:(大きく頷く)

小岩さん:すくすくスクールは「放課後子どもプラン」です。だから行政的に、明らかに違う事業。記者さん区長さんも、ご存知ないのかな。私程度の一般人でも知っていることです。これって完全に、誤りなのでは? 訂正記事出していいレベルかと。

篠崎さん:でもあえて、「学童保育」と大きく見出しに立てていますよね。だから書いた記者の方も、そしてインタビューに答えた方も、「すくすくスクール=学童保育ではない」こと十分に知った上で、「あえて」イコールであるかのように表現しているとしたらどうでしょう?

すごい誤認 小岩さん:意図したミスリードってこと?

葛西さん:「すり替え」の意図があるってことでしょうか…ね。

瑞江さん:私は、その可能性も否定できない、と思います。

小岩さん:私、この見出しを見て、「おやつがないことが"すごい"」のかなと思っちゃいましたよ。だって「生活の場」である学童保育で「食」の要素が一切ない江戸川区ですから。確かに、「学童保育」の常識が覆りました(苦笑。

全員:(苦笑い)

※平成25年度から、江戸川区の学童クラブでは、「補食(おやつ)」が廃止されました。この廃止に関する詳しい経緯は、「江戸川区・学童補食の継続を願う会」をご覧ください。


■2 『全入の学童』と書かれている謎。まるで「すくすくスクール」が、待機児童解消の画期的手法であるかのごとく。

篠崎さん:またまた見出しから責めちゃいますけど、次に気になるのも『全国初! 希望者「全入」の学童』という見出し。これって皆さんいかがでした?

葛西さん:同じく、のけぞりました。これも、「すくすくスクール=学童保育」と印象付けるための、「すり替え」かな。「全入」なのは、「放課後こども教室」である「すくすくスクール」であって、学童保育じゃないですよね。すごいすり替えです。

小岩さん:ここ、記事読みますね。記者の方がこう聞いているところ……『「全入」とは画期的です。多くの自治体には、共働き家庭の子どもを学童クラブで預かる仕組みがありますが、近年は激戦化し、入れない子どもも出ています。入れたとしても、狭い部屋に「すし詰め」になっていることも多いと聞きます。なぜ、それが可能なのですか?』と、あります。

葛西さん:ちょ、ちょ…実際、うちのすくすくスクールは「狭い部屋にすし詰め」ですけど(苦笑。

瑞江さん:まあその話題はあとからにして…。ここであえて、今話題になっている学童保育の待機児童問題を引き合いに出して読者の関心を引き、その解決策として江戸川区のすくすくスクールを「学童保育」として紹介していますね。狙った答えを引き出すための、意図した質問ですね。

小岩さん:「すくすくスクールに登録する」だけだったら、年度初めに江戸川区に書類を出すだけ。却下されることはないです。何人でもOKですから。確かにそれは「全入」。でもそれは「すくすくスクール」に、であって、「学童保育」への登録ではないです。

篠崎さん:記者さんの発言にありますね…『「すくすくスクール」には年齢や人数の制限がありません。希望すれば、誰でも入ることができます。この方式は全国で初めてですね』

葛西さん:この部分を予備知識なく読むと、学童保育への登録希望者がいくら増えても、「全入」できる画期的なシステムを江戸川区が作った!という風に読めます。

篠崎さん:箱にどんどん「数」を詰め込んでいくだけで、保育の「質」を問わないなら、それはいくらでも入るでしょうね。江戸川区は書類を受け取ればいいだけだから。確かに「全入」です。間違ってないですよ。うん。

すくすくスクール利用申込書 葛西さん:ちょっと数値がありまして。江戸川区の小学生「3万6000人」のうち、7割弱「2万4000人」が、すくすくスクール登録児童だそうですよ。

小岩さん:7割ですか。まあすくすくスクール登録だけなら、年度初めに書類を一枚出して、保険料500円払うだけだから。低学年の家庭なら、特に利用する予定が無くても、お母さんが働いていなくても、「いちおう登録しておく」って感じの人が多いですよね。

瑞江さん:同じクラスの専業主婦のご家庭では、今日はお母さんがちょっと午後美容院に行くからとか、水曜日は午後テニススクールがあるんだけど、子ども一人で留守番はまだ怖いから「すくすくに4時までいなさい」という感じで利用する、そんな話を聞きました。

葛西さん:でも2万4,000人のうち、何人が学童登録なのか、実際にそうやって不定期的に利用している「一般登録(すくすく登録)」の子どもが何人なのか、実際の利用率はどのぐらいなのか……そのあたりの現状の紹介が記事ではまったく触れられていません。

小岩さん:記事を読むだけでは、「2万4000人」という、なんだか途方もない数の収容が可能というイメージがわきますね。これは確かに画期的だなと、読者に思わせる。

篠崎さん:でも待って。2万40000人を、江戸川区内の小学校73校で割ると、一校あたり329人でしょう? 皆さんの小学校のすくすくスクール専用の部屋の大きさって、どれくらいですか?

小岩さん:教室2個分くらいかなあ。

葛西さん:うちも同じくらい。もうちょっと狭いかな。

瑞江さん:うちもです。

篠崎さん:すくすくスクール専用のスペースって、「すくすくホームルーム」という呼び方をしていますが、だいたい1校につき、教室1個半〜2個ぐらいのスペースしか用意されないところが多いですよね。ここに、329人の子どもの「全入」が起こったらどうなるんでしょうね。

葛西さん:今でも、うちの小学校のすくすくスクールは、時間帯によっては蜂の巣を突いたような状態です。息子が、周りで遊ぶ子たちや、テレビの音がうるさくて宿題ができないと言ってます。宿題をやる机も少ししかなくて、いつも場所の取り合い。床で寝そべってやる子もいます。そして毎日ではないけど、静かにさせるためにDVDで「クレヨンしんちゃん」などを流しているそうです。

瑞江さん:先日のTBSのNEWS23(注1)で、この問題が取り上げられましたよね。すくすくスクールの様子が映像で映ったでしょう。場所が無くて、床に寝そべって宿題をする子とか、ぎゅうぎゅうにひしめき合って遊ぶ子たちとか。うちの小学校もそうですよ。

(注1)2013年11月23日・TBS「NEWS23」で放映…「“子ども教室”と“学童”・共存に課題も…」
※画像クリックでTBSのサイトへジャンプします。下の画像は、江戸川区内某小学校「すくすくスクール」で、DVDに見入るすし詰めの子ども達の様子。


TBS「NEWS23」特集・子ども達の未来へ「“子ども教室”と“学童”・共存に課題も…」

葛西さん:TBS見ました。で、江戸川区の「すくすくスクール」が映る前に、さいたま市の「学童保育」の様子も映っていましたよね。全然違いましたねー。ゆとりあるスペースで、宿題をしたり、思い思いに遊ぶ子どもたち。指導員さんが女の子の隣に座って、ちょっと宿題にアドバイスしていたりとか。すくすくスクールでは、絶対にあり得ない光景にびっくり。ショックでしたね。指導員が少なすぎて、一人一人に関わる時間も余裕もないですから。さいたま市の様子。あれこそが学童保育、ですよね。

小岩さん:2006年ごろにすくすくスクールに一体化される前の、江戸川区の「学童クラブ」はあんな感じだったって、友達のお母さんが言ってました。子どもは学童大好き、ママも安心して働けたそうです。「いまのすくすくじゃ、行きたくなくなって当然ね」と言われちゃいました。

篠崎さん:うちの子が言ってましたが、すくすくスクールでは宿題をやろうとしても、「やっちゃいけない時間」があるんですって。

葛西さん:え〜? それってなんですか?

篠崎さん:とにかく常時、がやがやワイワイうるさい状況の中で、例えば指導員の方が、「これから校庭で遊んでもいいです」など何か全体に伝えることがあるとき、全員が静かになるまで、宿題をやっている子も手を止めて待ってないといけないのだそうです。ところが子どもが多すぎるから、指導員の方が声を枯らしても静かになるまで20〜30分かかる。その間、鉛筆を置いて、じっと机で待ってなきゃいけないルールなんだそうです。

瑞江さん:それってうちの子も言ってました。

篠崎さん:子どもは、早く宿題を終わらせて遊びたいのに、待ってる時間がもったいない。なかなか宿題が終わらせられない!と怒っていました。親としては、静かにさせるために数十分も待たせていたのでは、せっかく宿題に取り組もうとしている子どもの集中力も途切れてしまうと思いますね。でも子どもが多すぎて、指導員が少なすぎて、場所が狭すぎて、統制が取れない、収集がつかない状況になっているのだと思います。

小岩さん:私、さいたま市の影像は、衝撃でした。指導員と子どもの距離が近いから。保育園の先生に近い存在に思えました。一方、すくすくスクールの指導員さんは、「プールの監視員」のようです。一人一人に関わりたくても、子どもが多すぎて…ただ「監視」しているだけ。しかも出入りも多すぎて、きめ細かに関わりたくても関われない。そんな中で安全管理もしなきゃいけない。指導員さんたちも、相当苦労されているのではないかと思います。

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