006:現役「すくすくスクール」の、江戸川区ママたちが驚いた!
「学童保育」の常識を覆す  脱現実! 東洋経済のすごい「記事」

オピニオン005

■4 「講師」「スクールマネージャー」…存在しない職種が出てくる謎。
そして150人の「講師」で、「手厚い」という謎。


小岩さん:次に、この部分なんですけど。『講師役を地域住民にお願いしたところ、希望者がたくさん出てくださった。それぞれの得意な分野、たとえば英語などの勉強から、お茶やお花、囲碁、将棋などの趣味に関することまで、幅広く教えてもらっています。スポーツを指導してもらうこともありますよ。子どもは学校での学習とはひと味違う、さまざまな体験ができます』。ここ、どうでしょう?

篠崎さん:え? うちのすくすくスクールでは、○○教室なんて聞いたことがありません。

葛西さん:英語、勉強、お茶、お花、囲碁、将棋、どれもうちのすくすくスクールではやっていません。

小岩さん:うちは、そうですね…一ヶ月に1回くらいかな。ドッジボール教室とか。あと夏休み中に1回だけ、工作教室があったり。牛乳パックとか、ペットボトルのね。いずれも30分〜1時間以内です。また参加には保護者など、大人の付添いを必要とする場合もあるので、仕事を休んで付き添っています。

折り紙 葛西さん:学童登録の子どもが年間で1,600時間を学童保育で過ごす中では、あったとしても月に1〜2度30分や1時間の講習だのナントカ教室だのは、ほんの、ごくごく一部の時間に過ぎません。そこだけクローズアップしてことさらに「絶賛」されても、じゃあその他の大多数の時間の「質」はどうなんですか? と聞きたいです。

瑞江さん:うちの子のすくすくスクールでは、工作教室などの講師は指導員さん(サブマネージャー)がやることがほとんどです。地域の人ではない。指導員さんのアシスタントを、お友達のお母さんがやっていたと子どもが言っていました。

小岩さん:あとここですね。『たくさんの講師のまとめ役として、各校にスクールマネージャー(すくすくスクールの校長先生のような役割)を置いています。彼らが講師を差配してく れるのです。ボランティアによるサポートの方や、学童クラブの先生をご経験された方など、講師は学校ごとに数十人います。150人ぐらいが講師として活動 している学校もあります』…この150人いる小学校は、いったいどこなんでしょう?

瑞江さん:「講師」らしき方は、自分のところでは2、3人しか思いつきません。私の職場は江戸川区内ですが、他の小学校にお子さんが通う同僚に情報を聞いてみましたが、「何かしてくれてるっぽい?人は、多くても10人」「講師って何?そんな人がいるの?」という感じで、皆さんピンと来てない。本当に150人も、「講師」がいる学校があるんでしょうか?それって江戸川区お得意の「延べ人数」で数えてるんじゃないですか? 一名を重複カウントありの。

葛西さん:「講師」の存在も謎めいていますが、あとすくすくスクールの「校長先生」と言う比喩で、「スクールマネージャー」がいる、って発言がありますよね。どのすくすくスクールにもいらっしゃるのでしょうか? うちのすくすくスクールにはいませんけど。

篠崎さん:これね、『各校にスクールマネージャー』と区長はおっしゃっていますが、「クラブマネージャー」の間違いだと思いますよ。

葛西さん:あ! クラブマネージャーですか。いわゆる「クラマネ」さんね。ならいらっしゃいます。じゃあ間違いですね、これ。

瑞江さん:でもクラマネさんも、これから減りますよ。だって平成24年度までは、クラブマネージャーさんに年間数十万円の「報酬」がありました。でも平成25年度からは、報酬は完全に廃止。報酬がなくなったことも関係しているのか、今年度は「クラブマネージャー」不在のすくすくスクールも何校かあるそうです。完全無償となった状況下では、来年度以降は、クラブマネージャーのなり手は、もっと減るのではないかと思います。

小岩さん:話が戻りますが、さっき私が言った過ごす時間のことで。例えば子どもが急に熱を出したり、遊んでいて怪我をした時など、「講師」の人が見てくれるわけではありませんよね。ボランティアばかりたくさんいても、それは働く親にとっての「学童保育」じゃないんです。安心して子どもを預ける場所にはなりえないんです。

葛西さん:そう思います。ナントカ教室の「講師」の方や「ボランティア」の方が、仮に何十人いたとしても、子ども達の様々な緊急事態…「熱が出た」「お腹が痛い」「地震が来て親が迎えに行けない」「友達とうまくいかない」「おなかがすいた」「あそこで激しいけんかが起きた」「怪我をした」「静かに勉強したいのに、まわりがうるさくてたまらない」…そんな様々な、子どもたちの「緊急事態」に、無償の「講師」や「ボランティア」さんに、対応してもらえるはずがありません。そしてそういう場所に、年間1600時間子どもを預けて、私たちは安心して働くことができません。

小岩さん:でもぶっちゃけね、江戸川区はすくすくスクールを「学童保育」、すなわち就労支援とは考えてないようですよ。いちおう建前上、「学童登録」の名は残していますが…その中身が、働く親にとっては不十分極まりなく、いまや学童保育が形骸化しているのは皆さんご承知の通りです。すくすくスクールを、江戸川区は「学童保育」ではなく、「健全育成」の場としてしか考えていないでしょう。そうでなければ、おやつといった「保育」の要素をなくすはずがありませんし。

瑞江さん:でも何度も言うけど、この記事は、すくすくスクールを「学童保育」と言い切っていますよね。あと、さらに驚くのがこの部分…150人という「講師」の数を聞いて、記者さんがこう言います…『――それは手厚いですね。大人たった数人で、子ども数十人を任されているということもよく聞きますので』と。

小岩さん:年に数回、1時間程度のナントカ教室でやってくる「講師」の数だけ、しかも「延べ人数」で取り上げ、学童保育のなんたるかも誤解したまま、「手厚いですね」って…何が手厚いのでしょうか…。ジャーナリストですよね。この方は。報道に関わる職種の方とは思えない発言です。現場の取材はされたのでしょうかね。

篠崎さん:たった数名の指導員さんで、連日100名を超える子ども達を日々見なくてはならず…人員は減らされる一方、正規職員の採用はなく非常勤ばかり。現場の皆さんが非常に疲弊している状況というのは、親から見てもわかります。「手厚い」とは、真逆の状態でしかないと思います。

葛西さん:それにしてもこの「講師が150人」って、いったいどこから出てきた数字でしょう?どこの小学校のすくすくスクールでしょう? ぜひ具体的に教えていただきたいです。

■5 親が働いている間の放課後、学校とすくすくスクール、誰が子どもに責任を負う?

小岩さん:最後に、これも結構驚かされる発言があります…『…(前略)…2005年からすくすくスクールを始めたわけです。ただ、当初は学校教員側の抵抗がありました。校舎を開放することになるので、管理上の問題を懸念されたのでしょう。そこで、「学校の先生に責任を負ってもらう必要はありません。私どもがすべての責任を負います」と説得して、納得してもらいました』と、あります。
すくすくスクール
葛西さん:こんな発言があったのですか! いま現在、学校の先生方は、すべての江戸川区立小学校の先生方は、本当に「すくすくスクールでのことは、江戸川区がすべての責任を負います」ということに、納得されているのでしょうか? 実際にすくすくスクール活動中に学校内で大きな事故が起こった時、江戸川区が責任を持って対応してくれるとは…思えないのですが。

篠崎さん:先日のNEWS23で、すくすくスクールに預けて働くお母さんが出てきましたよね。

葛西さん:見ました!子どもが発熱の知らせに、仕事を切り上げてすくすくスクールに駆けつけたら、大勢の子どもが遊ぶ喧噪の床に、敷物も何もなく、発熱のわが子がじかに転がっていた…という。

瑞江さん:その話はうちの小学校でもありましたよ。いちおう子どもには、古いタオルみたいな布が、かけられていたそう。床には何もないけど。それだけでもマシなのかしら。

小岩さん:そういう話は、私も他で何件か聞きました。だいたい、「保健室を使う許可がもらえなかった」とか、「保健室に付き添えるだけの指導員がいなかったから、仕方なくすくすくの床に」とか、そういう理由ですね。すくすくスクール活動中に保健室が使えるかどうかというのは、かなりその学校の校長先生や養護の先生の裁量下にあり、学校ごとのばらつきが大きい。

葛西さん:うちの学校は、基本的にはすくすくスクール活動中の保健室利用は、学校に良い顔されません。養護の先生も、勤務時間が過ぎたから、それ以上の仕事はしてくれません。もっとも保健室に付き添える指導員すら足りませんから、連れて行ってもらえることすらないのですけどね。熱が出たら喧噪のすくすくスクールホームルームで床に転がっているのが、基本的な対応です。

小岩さん:すくすくスクール教室内に休憩できる場所などあるわけもなく、保健室の利用ひとつにとっても、江戸川区がきちんとした指針を出していないから、こういう事態になっていると思います。大人たちの怠慢で子どもにしわ寄せ、です。

■6 「すくすくスクール=学童保育」であるかのように伝えて、「得」をするのは誰?

葛西さん:私、この記事を読んで「どこかで聞いたような」と思ったんです。そうしたら、確か多田区長が2006年に国会招致され「すくすくスクール」の推進について発言された時にも同じような話をされていたような気がするんです。

小岩さん:そうなんですか。でも2006年からというと、実に長い歳月が経ちましたが、区長さんは子ども達が活動している時間に、すくすくスクールの様子をご覧になったことがあるのでしょうか? 実態をご覧にならずに報告だけ受けてお話しされているとしたら、また現場をご覧になったとしても「都合の良い部分」しかご覧にならないとしたら。江戸川区で働き、納税をしている区民としては、失望を禁じえません。

篠崎さん:月に数回、あるいは年に一度、数時間来るだけの「講師」と、年間1600時間もの子どもの「生活」を支える「学童保育」の指導員をごちゃごちゃにして話をされるなど…最初に戻りますが、区長さんも記者さんも「本当にわかっておられない」のか、それとも意図的に「ごちゃごちゃにして印象を操作している」のか…

瑞江さん:いずれにしても、「江戸川区の学童保育を知りたい」と思って読んだ人に、大変大きな誤解を与える記事に仕上がっていることは、間違いありません。これで、誰がどういう「得」をするのでしょうね?少なくとも私たち、利用者でないことは確かです。

END.

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