003:すくすくスクール事業は誰のため? 〜ある「すくすくスクールサポートセンター長」からのご意見

すくすくスクールイメージ

今年春から、6時まで学校で保育される学童登録の子ども達が受けられた、補食(おやつ)が中止となりました。 その結果かどうか分かりませんが、高学年の子供たちの何人かは、それを機に学童登録を止めたり、5時で帰宅し、自宅でおやつを食べるようになったと聞きました。

一番人数の多い一年生は、入学の時から学校でおやつが食べられるなどという嬉しい体験がないため、順応しています。「おなかすいた〜」と言う子もたまにいますが、教員、スタッフも、子ども達が空腹に気が回らず、楽しい時を過ごせるように努めているそうです。

補食を中止するなら、それに係る労力もいらないだろうと、当たり前のように人減らしがされ、「今の人数で補食も賄うのは、無理でした」と、日々忙殺されている教員、スタッフの皆さんが、ほっとしている面も見られます。

確かに、ただ小腹を満たすだけではなく、教育の場ということを重視して、共に食す喜びの時間、少しでも手作り感のあるおやつをと、炊事設備も無い教室で、電子レンジをフル活用して準備していた努力には、本当に頭が下がります。

すくすくスクールに関わって、放課後の子ども達が、如何にのびのびと、如何に傍若無人に過ごしているか、最初はびっくり、今は「これが本来の子どもの姿」と納得しています。

江戸川区は、「地域と共に創っていくすくすくスクール」と国会でも称賛されたこの事業のボランティア募集に際し、「すくすくスクールの中では子どもたちは率直に心から大人にぶつかっていきます。サポーターの方々も様々な学びを経験されることと思います。どうぞお気軽に」と誘っています。

でも同時に、放課後、放たれた元気いっぱいの子ども達を毎日、雨の日も風の日も、灼熱の日中も、安心、安全に育成する場は、行政が、未来を見据え、きちんと税金を使って保障しなければならないと考えます。

そして「すくすくスクールは、江戸川区の各小学校の施設を活用しながら、地域のみなさんと一緒につくるもう一つの学校です」と謳いながら、サポーターには何の相談も無く、一方的に補食の中止、クラブマネージャー報酬や人件費の大幅削減、ボランティアのお茶出し禁止等々、次々打ち出して行く…これは、江戸川区の口先だけの「地域と共に創っていくすくすくスクール」ではありませんか?

私は、すくすくスクールを充実していくことは、女性が社会で安心して働ける支えとなるとずっと信じていましたが、過去にそういった話になった際、江戸川区・教育推進課すくすくスクール担当の係長は、「すくすくスクールは、教育の場であって、女性労働推進の施策ではありません」と念を押すように話しておられたのが印象的でした。私は、江戸川区とは、複雑なベクトルが錯綜する子育てに、なんと単純な縦割りの考えができるのだろうと驚きました。仮にすくすくスクールが、教育する場であるなら、労働力的、空間的にゆとりを持たせて欲しいです。だからこそ数年前に、江戸川区立・松本小学校児童の虐待(注1)が、縦割り行政ゆえに見過ごされ、痛ましい事件に至ってしまったのです。

また半世紀前の理念である、「乳児期の成長には温もりのある家庭保育が欠かせない」から進歩せず、区内の認可保育園での0歳児保育を認めない江戸川区(注2)は、保育補助料を出さず、いまだに密室的な「保育ママ制度」のみに固執しているのです。

すくすくスクールでの問題は、江戸川区の「お上体質」の表れの一部であって、「区民の、 区民による、区民のための政治」が行われてないからです。

では、区政は誰のためのもの?

(江戸川区立小学校・すくすくスクール・サポートセンター長(注3):2013/11記)

注1:江戸川区立松本小学校・児童虐待死事件

2010年1月、江戸川区立松本小学校の1年生児童が、実母と義父から1年以上にわたる暴行の末、死亡した。学校に長期来ないなど様々なサイン、また周囲の人からの通報があったにもかかわらず、「見逃され」た結果の痛ましい事件。江戸川区の柔軟な対応があれば、防げたとの指摘も多かった。


注2:認可保育園での0歳児保育を認めない江戸川区

江戸川区は、23区内で唯一、認可保育園で0歳児を受け入れていない。0歳で仕事復帰する母親は、江戸川区が全面的に推進する「保育ママ」を推奨されるが、密室保育ではなく集団保育を希望するなら「認可”外”保育園」しか選択肢がない。認可外(認証、認定等)保育園の0歳児保育料は、一例で月額6〜7万円だが、これに対して江戸川区から補助は出ない。なお「保育ママ」に預けると、認可園入園児の「指数をプラス1」するという”特典”も、数年前から導入された。


注3:すくすくスクール・サポートセンター

子ども達の日々の見守り、遊び相手、話し相手、イベントの企画実施などを行う、すくすくスクールのボランティアスタッフ。主に小学校周辺地域の住人が担っている。報酬等はなく、すべて無償・希望制での参加とされている。
※すくすくスクールの運営スタッフ名称に関する解説は、江戸川区ホームページ「すくすくスクールの運営」でもご覧いただけます。

◆他の「OPINION」も読む方は→こちら

MENU

↓こちらもあわせてご覧ください

江戸川区・学童補食の継続えどがわ学童補食の継続を願う会ブログ

えどがわ学童保育フォーラム・twitter

inserted by FC2 system